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私について(はじめに)

2023年 8月 15日,腸閉塞による腹痛で私は急遽入院をすることになり,同月 29日に小腸から大腸の一部を切除しました。そして同年9月27日,切除した組織の生検結果を医師より告げられ,リンパ節への転移と直腸への遠隔転移を確認する小腸がんステージ4との診断を受けました。
小腸がんは発症リスクがとても低く,希少がんとして取り扱われています。そのため標準的な治療方法はなく,明確なエビデンスはありませんが,大腸がんの標準的な治療方法(CapeOX+ベバシズマブ)で経過をみているという状況です。

今,がん患者になって初めて,患者側の視点で医療者(薬剤師)をみるという経験をしています。現実と向き合い,この経験を活かして,医療者の方々に情報発信をすることが私の使命だと感じ,私自身の症例や経験を通じて連載させていただこうかと思います。
微力ながらでも,この記事の内容を通じ患者さんへの支援に役立てていただけたら幸いです。

病を抱える人の心理

私は,腸閉塞が原因で入院をしましたが,最初は「ただの小腸の閉塞であって入院もそう長くはないであろう」と軽い気持ちでいました。しかし,血液検査の結果により状況が大きく変化します。腫瘍マーカーの値が異常な高値を示していたのです。このとき,医師の表情からもその深刻さがみてとれました。その後すぐにイレウス管という太いチューブを鼻から挿入し,検査の日々が続きました。
自分で小腸がんについて調べてみると,自覚症状が少なく気がつきにくいがんであるため,発見時には進行がんとなっていることが多く生存率が極めて低いということがわかりました。そのときは,どのように現実を受け入れたらよいのか,混乱と不安,さらにイレウス管による息苦しさから眠れない日々が続きました。
当時,入院していた病院は,看護師さんが毎日入れ替わりで容態を確認しに病室へ来てくれていました。機械的にバイタルチェックをするだけの看護師さんもいれば,コミュニケーションをとりながら丁寧に対応してくださる看護師さんもいます。コロナ禍により面会禁止されている患者としては,わがままかもしれませんが「何か一言でも優しく話しかけてほしい」そういった感情になるものでした。

薬局で活かせる視点

病気を抱えながら生きている患者にとって,医療者からの言葉は影響が大きいのではないかと感じます。病気や治療に関するエビデンスや知識,検査値などの数値に対する評価ではなく「あなたを気にかけていますよ」や「私はあなたの味方ですよ」というメッセージや姿勢が嬉しいのです。
看護師が定められた時間に機械的にバイタルチェックを行うのと,薬剤師が決められた場所で定められた事項を説明するのは状況として少し似ていると思います。つまり,定められた業務のなかで,どのようにコミュニケーションをとりながら行うかによって,患者の医療の受け取り方はまったく異なるのです。したがって,些細なコミュニケーションのなかに「患者をケアする」という概念が含まれていることが大切なのだと私は考えています。
薬局の現場にあわせて考えてみるとのような行動項目が,当たり前のことかもしれませんが「患者をケアする」ためにできることなのかなと考えます。さらに,かかりつけ薬剤師に同意する患者さんとの関係性があれば,よりいっそう実行しやすい項目なのではないでしょうか。

 「患者をケアする」ためにできる行動項目

大切な話やプライベートな話は「わかってくれる人」「理解しようとしてくれる人」にしか話せない(話したくない)ものです。薬局や薬剤師においても,まずは親しみやすい関係性を構築することが,正しい知識を正確に伝えることよりも優先されることなのかもしれません。

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掲載号
調剤と情報2024年2月号

薬局のための
外国人患者応対のポイントとコツ


企画:俵木 登美子(一般社団法人 くすりの適正使用協議会)


令和3年度「医療機関における外国人患者の受け入れに関わる実態調査」(厚生労働省)によると、約半数の医療機関が外国人患者の受け入れを経験しており、今後、さらなる訪日外国人や外国人労働者の増加が予想され、薬局における外国人応対は他人事ではありません。また、翻訳アプリの活用やアドホック通訳の活用なども考え得るコミュニケーション方法ではあるものの、その限界やリスクを薬剤師としてしっかり理解しておく必要があります。
本特集では、外国人患者応対をテーマに、どのようにコミュニケーションを取るべきか、各ツールの限界やリスクをどのように理解すべきかなど、薬局薬剤師が知っておくべきポイントとそのコツについて解説します。