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  • 調剤と情報2025年1月臨時増刊号(Vol.31 No.2)

    データから理解し,次のパンデミックにつなげる

    新型コロナ検証SP

  • 田淵 貴大/企画・編集
  • 定価4,180円(本体3,800円+税10%)
  • B5判/268頁/2025年1月刊
新型コロナウイルス感染症を徹底検証!

新型コロナウイルス感染症の流行下において、われわれはこれまでに経験したことのない感染症との戦いを経験しました。また、ウイルスとの戦いは、三密回避、緊急事態宣言、ワクチン接種やワクチンパスポートなど、現代社会にも多大なる影響を与えました。
2023年5月に新型コロナウイルス感染症が感染法上の5 類に変更され、一区切りとなりました。しかし、次のパンデミックが、またいつ発生してもおかしくないことは想像に難くありません。したがって、いまこそ新型コロナウイルス感染症をデータで振り返り理解したうえで、次のパンデミックに備える必要があります。
本臨時増刊号では、新型コロナウイルス感染症に関するデータを中心に、何が起こっていたのか、良かったこと悪かったことは何なのかについて解説します。

本雑誌の紹介

はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)問題が世界を席巻してから約5年の月日が流れた。あの経験はわれわれが,これまでに経験したことのない感染症との戦いであり,三密回避,緊急事態宣言,ワクチン接種やワクチンパスポートなど,社会活動に多大な影響を与えた。2023年5月に新型コロナウイルス感染症が感染症法上の5類に変更され,一区切りとなったが,次のパンデミックが,またいつ発生してもおかしくない状況である。いまこそ新型コロナウイルス感染症をデータで振り返り,理解したうえで,次のパンデミックに備える必要があるといえる。
本臨時増刊号では,新型コロナウイルス感染症問題が起きていた時期に,感染症関連だけでなく社会全般においていったい何が起こっていたのか,良かったこと悪かったことは何なのか,データに基づいて論説する。本臨時増刊号のタイトルを「データから理解し,次のパンデミックにつなげる 新型コロナ検証SP」と題し,新型コロナウイルス感染症の問題に直面し,データを収集,論文として情報を発信,新型コロナウイルス感染症の問題を検証してきた日本を代表する研究者に寄稿していただいた。新型コロナウイルス感染症などについて,皆さまから教えていただくことばかりであるが,新型コロナウイルス感染症の問題を実証すべく立ち上げた,日本の一般住民インターネット調査プロジェクトであるJACSIS/JASTIS研究(誰でも共同研究者として参画できるため,気軽にお声がけください)の代表者を務めさせていただいている関係で本企画を立案させていただいた。
本臨時増刊号は,医療従事者を含めたすべての人に一読いただきたい内容といえる。それは新型コロナウイルス感染症の問題はすべての人に多大な影響を及ぼし,将来のパンデミックもすべての人の問題だからである。皆さまが将来新しいパンデミックに遭遇したときに,それぞれ直面する課題に対処するうえで,少しでも役に立てば幸いである。本臨時増刊号の執筆や編集に携わっていただいたすべての皆さま,さらには助言などいただきました皆さまに感謝の意を表したい。


最後に,JACSIS/JASTIS研究の共同代表でもあり,本臨時増刊号にもご執筆いただいた古瀬祐気先生の言葉を二つ引用し,紹介文とさせていただきたい。「エビデンスは更新され続けるものであり,データに基づくエビデンスであっても一つの真実を示すとは限らない。そして,公衆衛生対策など社会的決断が必ずしもエビデンスに基づいてなされるわけではないことを,このパンデミックを通じて私たちは学んでいった」(p36)
「次のパンデミックでも,私たちは多くの問題に直面するだろう。それでも本誌で検証されたさまざまな内容を糧に,より確かなエビデンスをより早く示して対策に活かしていきたい。そして,よりしっかりした検証をこれからも繰り返すことで,パンデミックにレジリエントな科学と社会を目指せるのだと信じている」(p37)


2025年1月
東北大学大学院 医学系研究科 公衆衛生学分野 田淵 貴大

本雑誌の紹介

目次

  • 1. 特殊な仕組みで感染症対策が動いている日本
  • 高鳥毛 敏雄(関西大学 社会安全学部・社会安全研究科)
  • 2. 過去を検証して未来に備えよう—— 研究することが社会を良くする(かもしれない)
  • 田淵 貴大(東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
  • 1. 新型コロナウイルス感染症流行の特徴と,将来のパンデミックへの備え
  • 押谷 仁(東北大学 医学系研究科 微生物学分野)
  • 2. 新型コロナパンデミックの問題点と初期対応のエビデンス—— クラスター対策と予測数理モデルについて
  • 古瀬 祐気(東京大学 新世代感染症センター 感染系微生物学分野)
  • 3. 新型コロナ時代に生活・医療・社会で何が起きたのか
  • 染小 英弘(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻医療疫学分野)
    田淵 貴大(東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
  • 4. 新型コロナ時代の労働者問題と今後の課題
  • 大河原 眞(産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学研究室)
    藤野 善久(産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学研究室)
  • 5. データ駆動型パンデミック対策:経験と教訓
  • 野村 周平(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート)
  • 6. 東京オリンピックに関連したデータからの検証
  • 米岡 大輔(国立感染症研究所 感染症疫学センター 第12室)
  • 7. 数理モデルによる分析と流行ピークの記述について
  • 西浦 博(京都大学大学院医学研究科 ヘルスセキュリティセンター)
  • 8. 労働者データからの検証
  • 石丸 知宏(産業医科大学 医学部 医学概論)
  • 9. 新型コロナパンデミックによる生活習慣の変化とその後の生活習慣病罹患に対する影響
  • 山本 精一郎,佐藤 洋子,溝田 友里(静岡社会健康医学大学院大学)
  • 1. 新型コロナ第一波の重症患者の記述疫学
  • 平山 敦士(大阪大学大学院医学系研究科 社会医学講座公衆衛生学)
  • 2. 新型コロナによりインフルエンザの市中感染が消失した理由の検証
  • 髙橋 秀徳(東京品川病院 呼吸器内科・感染症内科)
  • 3. ネクストパンデミックのために,やっておくべきこと
  • 小坂 健(東北大学大学院 歯学研究科 災害科学国際研究所)
  • 4. エアロゾル感染についてわかったこと
  • 坂本 史衣(板橋中央総合病院)
  • 5. 新型コロナ対策で無駄だったこと
  • 森下 直美(兵庫県立加古川医療センター 看護部)
    海老澤 馨,池垣 俊吉,岩田 健太郎(神戸大学医学部附属病院 感染症内科)
  • 1. 新型コロナ時代のリスクコミュニケーション(ワイドショーの研究も含め)と今後の課題
  • 桑原 恵介(横浜市立大学 医学部 公衆衛生学 /大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻)
  • 2. パンデミック中の介護者の精神的健康
  • 谷口 雄大(筑波大学医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野)
    宮脇 敦士(筑波大学医学医療系 公共健康政策分野)
  • 3. コロナ禍における社会経済状況の悪化と健康影響
  • 松山 祐輔(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 歯科公衆衛生学分野)
  • 4. 給付金の影響に関する検証と今後の課題
  • 池田 登顕(山形大学医学部 医療政策学講座)
  • 5. 新型コロナ問題における健康格差を評価する視点の重要性
  • 髙田 碧(名古屋大学大学院医学系研究科 国際保健医療学・公衆衛生学)
  • 6. 新型コロナウイルス恐怖尺度についてわかったことと今後の課題
  • 翠川 晴彦(筑波大学附属病院 精神神経科)
    太刀川 弘和(筑波大学医学医療系 臨床医学域災害・地域精神医学)
  • 7. コロナ時代の受診抑制と今後の課題
  • 帯包 エリカ(国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
  • 8. Long COVID 問題の検証と今後の課題
  • 本田 仁(藤田医科大学 医学部微生物学講座・感染症科)
  • 1. ストロングゼロ問題と今後の課題
  • 吉岡 貴史(慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室HTA公的分析研究室/昭和大学 臨床疫学研究所)
  • 2. 新型タバコ問題と今後の課題
  • 市川 政雄(筑波大学 医学医療系 国際社会医学研究室)
  • 3. 改正健康増進法と新型コロナパンデミック下の喫煙行動について
  • 山本 貴文(北海道大学病院 予防歯科)
  • 4. オンラインでのつながりと孤立・孤独
  • 荒川 裕貴(横浜市立大学医学部 公衆衛生学教室)
  • 5. オンライン診療の可能性と今後の課題
  • 宮脇 敦士(筑波大学医学医療系 公共健康政策分野)
  • 6. テレワークについてわかったことと今後の課題
  • 金森 悟(帝京大学大学院 公衆衛生学研究科)
  • 7. コロナ禍での妊娠・出産から学ぶ今後の課題
  • 大川 純代(国立国際医療研究センター 国際医療協力局 グローバルヘルス政策研究センター)
  • 8. ワクチン問題の今後の課題
  • 町田 征己(東京医科大学 公衆衛生学分野/東京医科大学病院 感染制御部)
  • 9. ワクチンパスポートの教訓と将来に向けて —— 次のパンデミックでのワクチンパスポートの将来性をどうすべきか考える
  • 田中 宏和(国立がん研究センター がん対策研究所 データサイエンス研究部)
  • 10. 二つのパンデミックにおける性的マイノリティのワクチン受容率
  • 堀 大介(筑波大学医学医療系 産業精神医学・宇宙医学グループ)
  • 11. ソーシャルメディアから見た二重パンデミック —— 米国におけるアジア系人種に対する差別の増加について
  • 出口 敦智(東北大学 医学部医学科)
  • 12. パンデミックと若者:Y7・Y20サミットの声明文に見る課題と展望
  • 山崎 蒼空(東北大学 医学部医学科)