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初めての小児がん調剤でも慌てない

小児がんの処方箋を初めて手にしたとき,「BSAってどうやって計算するの?」「制吐薬の用量は?」「家庭での注意点は?」ととまどった経験はありませんか? 今回はそんなときに押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。

体表面積(BSA)の計算と「体重増加時の再計算」あるある

小児がん治療では,体表面積(body surface area;BSA)をもとに抗がん薬の用量を決定することが多く,下記の式が基本です。

【Mosteller式】
BSA(m2)= [ 身長 (cm) × 体重 (kg) ] 3,600
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新人さんが陥りやすいのは,治療開始時にだけ投与量を計算して,そのまま継続してしまうパターンです。成長の早い小児では,数週間で体重が1kg以上増えることもあり,自ずとBSAも変わります。たとえわずかな変化でも,薬によっては効果や副作用に影響するため,各コース開始時には必ず身長と体重を確認し再度計算する習慣が大切です。

制吐薬や便秘対策など支持療法の簡単チェック

抗がん薬の副作用対策も大切な仕事です。特に制吐薬(オンダンセトロン,アプレピタントなど)は年齢や体重で用量が変わります。添付文書やプロトコルを確認するのはもちろんですが,実務では「制吐薬の用法・用量や持続時間」を把握しておくと,保護者への説明もスムーズです。

また,ビンクリスチンなど一部の抗がん薬では副作用として便秘がよくみられるため,酸化マグネシウムなどの緩下薬が予防的に処方されることがあります。説明の際には「副作用予防として処方されています」「水分や食物繊維の摂取も大切です」と補足すると,保護者の安心感が高まります。

感染対策と家庭での配慮

小児がん治療中の患児は免疫抑制により感染症にかかりやすく,特に冬季は注意が必要です。薬局からも「外出後や食事前の手洗い・うがいを徹底すること」「人混みを避けること」など,具体的な感染対策を伝えると効果的です。こうした声かけは,薬だけでなく生活全般を支える姿勢として信頼につながります。

さらに,経口抗がん薬を家庭で扱う場合には,家族に曝露しないような配慮が必要です。残薬の処理や排泄物の取り扱いの際には,使い捨て手袋やビニール袋を利用し,直接触れないようにすることが望まれます。家庭でも安心して取り扱える方法を伝えることは,保護者の不安軽減につながります。

2025年11月号