感染症シーズンに備えて
10 月に入り,朝晩の寒暖差が以前より大きくなってきました。この時期になると,小児科の外来は,咳や鼻水の子供が増え,毎年インフルエンザをはじめとする感染症への備えが必要な時期となります。小児は重症化リスクが高く,また家庭内での二次感染も問題となるため,薬局薬剤師には処方薬の適正使用をサポートする役割が求められます。
家庭への指導では「薬をもらったらできるだけ早く服用を開始すること」「抗菌薬は症状が軽快しても自己判断で中断せず,処方日数を飲み切ること」「家族内での感染拡大を防ぐため,手洗い・換気を徹底すること」といった基本事項を伝えるだけでも,保護者の安心感が大きく高まります。また,帰宅後や食事前に手洗い・うがいを勧めたり,兄弟間の感染防止のために兄弟が風邪気味のときは,マスクや食器の共用を避けるよう伝えることも重要です。
今年は 9 月から流行の兆しがみえたインフルエンザについては,ワクチン接種が 10 月から始まるので,保護者に早めに接種の予定について,声かけすることも有効です。特に小児では接種回数や間隔に注意が必要であり,「いま予約すればひと月後までに打ち終わりますよ」と具体的に伝えることで,保護者の行動につながります。薬局でのこうした予防的アドバイスは,医療機関との連携強化にもつながります。
ドライシロップの特徴と服薬支援
小児科処方で頻用されるドライシロップは,抗菌薬だけでなく解熱鎮痛薬や抗アレルギー薬など幅広い薬剤に用いられています。体重に応じて用量を調整しやすいこと,粉末の状態では比較的安定して保存でき,携帯性にも優れることが大きな利点です。
服用方法は粉状のまま服用しても基本的に問題ありませんが,スプーンなどに取って 5 ~ 10mL 程度の水でペースト状やシロップにしてから服用することも可能です。ドライシロップは分包されているため,液体シロップ剤に比べ正確な量を投与できる点も利点です。保存方法は薬剤ごとに異なり,溶解後,冷所保存を必要とするものや,速やかに服用するものまでさまざまです。したがって,「この薬は冷蔵庫で保管する必要があるか」「どのくらいの期間で飲み切るべきか」を確認し,保護者へ明確に伝えることが大切です。
味覚対策にも注意が必要です。ご存じのとおりクラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬のようにオレンジジュースやスポーツドリンクなどの酸性飲料と混ぜると苦味が増す薬剤は酸性飲料との混合を避けなければなりません。一方で,これらの飲料と混ぜることで飲みやすくなる薬もあります。食品との相性は薬剤ごとに異なるため,患児の嗜好を確認したうえで,食品との飲み合わせに関する情報を保護者へ伝えると安心して服薬でき,アドヒアランスの向上につながります。
まとめ
10 月は冬季感染症に備え,薬局での小児対応が増える季節です。インフルエンザ治療薬の適正使用やワクチン接種への声かけ,さらにドライシロップをはじめ,薬剤全体の服薬支援のポイントを押さえることで,日常業務に自信をもって臨めるでしょう。薬剤師のちょっとした工夫や一言が,子どもと家族の安心につながります。