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五月病・六月病とは?

五月病とは,進学や就職,異動などで環境が大きく変わった後,5月頃に心身の不調が現れる状態を指す。やる気が出ない,気分が落ち込む,眠れない,食欲がないなどが特徴であるが,正式な病名ではなく,主に新生活へのストレスや緊張の反動として生じると考えられている。六月病は,こうした不調が6月以降も続いたり,少し遅れて現れたりする状態をいう。梅雨の時期の気候変化や疲れの蓄積も影響するとされ,早めの休養や相談が大切である。

新生活ストレスから五月病・六月病に至る4コマイラスト

五月病・六月病の発症メカニズム

五月病・六月病は正式な診断名ではないが,主に適応反応症や抑うつ状態の発症過程として説明される。新生活に伴う心理社会的ストレスは視床下部 - 下垂体 - 副腎(HPA)系および交感神経系を活性化させ,コルチゾールやアルファアミラーゼの分泌亢進,心拍数の上昇をもたらす1)。コルチゾール高値が長期間持続すると,海馬をはじめとする脳領域でセロトニン受容体(特に5-HT1A受容体)の機能が低下することが報告されている。セロトニンは気分や意欲を調整する神経伝達物質であり,その機能低下は抑うつ症状につながりやすい2)(図)。さらに,梅雨期の日照時間減少は概日リズムにも影響を及ぼし,症状を持続・増悪させると考えられている3)

五月病・六月病発症までの流れを示すフロー図

図 五月病・六月病発症までの流れ

新社会人・新入生のメンタルヘルス事情

新社会人や新入生は,慣れない環境への適応,人間関係の再構築,生活リズムの変化など,複合的なストレスに直面する。こうした心理社会的負荷がHPA系の活性化を介して心身の不調を引き起こしうることは前述のとおりであるが,現代の若者にはさらにSNS(social networking service)という特有のストレス要因がある。

2000年代に登場したSNSは,スマートフォンの普及とともに利用が急速に拡大した。特にスマートフォンとともに成長したZ世代(1990年代後半~2010年代前半生まれ)にとって,SNSは日常的コミュニケーションの中心であり,自己表現や承認獲得の主要な場となっている。一方,思春期以降にSNSが普及したY世代(1980年代前半~1990年代半ば生まれ)は「移行世代」に位置づけられ,好まれるプラットフォームや利用機能も両世代で異なる4)

Z世代はSNSを連絡・情報収集・自己表現の"生活インフラ"として活用する一方,通知や投稿の洪水,返信への期待,他者との比較,炎上回避への気遣いなどにより心が摩耗しやすい。中国の若者を対象とした研究では,SNS上の過剰な情報や対人要求(情報過多・社会的過多),他者との比較による心理的ダメージ(ネガティブ比較),常に自分の良い側面だけを見せようとする印象管理などが「SNS疲れ」を高め,SNSから距離を置きたくなる行動につながることが示されている5)

しかし,SNSには疲れさせる要因と同時に,やめられなくさせる仕組みが並存している。「いいね」や「コメント」という小さな報酬が脳のドパミン系を刺激するよう設計されているうえ,「今この瞬間,自分がSNSを見ていない間に誰かが楽しい経験をしているかもしれない」という不安(FOMO)が頻繁なチェック行動に駆り立てる6)。さらにZ世代では,友人との連絡,グループチャット,学校や職場の情報共有など,生活に必要な情報や人間関係がSNSに統合されており,アカウントを削除すれば社会から孤立しかねないという構造的な問題もある。

SNSと上手く付き合うためには,通知を切る,比較を誘うアカウントをミュートする,即座に返信しないなどの工夫に加え,SNS以外の場面で心を満たす活動を増やすことが大切である。

引用文献

1)Giles GE, et al : Stress Effects on Mood, HPA Axis, and Autonomic Response: Comparison of Three Psychosocial Stress Paradigms. PLoS One, 9 : e113618, 2014

2)Mikulska J, et al : HPA Axis in the Pathomechanism of Depression and Schizophrenia: New Therapeutic Strategies Based on Its Participation. Brain Sci, 11 : 1298, 2021

3)Dollish HK, et al : Circadian rhythms and mood disorders: Time to see the light. Neuron, 112 : 25-40, 2024

4)Curtis BL, et al : Comparison of Smartphone Ownership, Social Media Use, and Willingness to Use Digital Interventions Between Generation Z and Millennials in the Treatment of Substance Use: Cross-Sectional Questionnaire Study. J Med Internet Res, 21 : e13050, 2019

5)Liu Y, et al : "Why Are You Running Away From Social Media?" Analysis of the Factors Influencing Social Media Fatigue: An Empirical Data Study Based on Chinese Youth. Front Psychol, 12 : 674641, 2021

6)Przybylski AK, et al : Motivational, emotional, and behavioral correlates of fear of missing out. Computers in Human Behavior, 29 : 1841-1848, 2013

2026年5月号