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パーキンソン病の症状と副作用について

パーキンソン病(PD)は有病率150〜200人/10万人の神経変性疾患で,振戦・筋強剛・無動という三大運動症状を主訴に発症する(図1)。中脳黒質のドパミン神経細胞が50〜70%程度まで脱落すると運動調節機能が破綻し,これらの症状が顕在化すると考えられている1)。失われたドパミン作用を補充することが最も有効な治療戦略であるが,ここに重要な落とし穴がある2)。PDには循環器系・消化器系をはじめほぼ全身に及ぶ多彩な「非運動症状」が現れる一方,ドパミン補充療法の副作用もこれらと酷似している。目の前の症状が「病気の進行」なのか「薬の副作用」なのか,判断に迷う場面が少なくない3),4)

このような「症状と副作用のオーバーラップ」を整理するには,PDの非運動症状と治療薬の副作用を横断的に把握することが不可欠である。

図1 PDの運動症状

図1 PDの運動症状

第1問

レボドパ製剤開始後から便秘が悪化したPD患者が来局。「もともと便秘気味だったが,薬を飲んでからひどくなった」という。この消化器症状について,薬剤師として何を確認すべきか。

  • ①PD非運動症状(消化器系)の可能性
  • ②レボドパの副作用による蠕動不全の可能性
  • ③どちらも念頭に置いて,治療開始前後の症状変化を確認する
解説

レボドパは末梢でドパミンに代謝され,消化管平滑筋運動を抑制することで蠕動不全を引き起こす。一方,便秘・消化器症状はPDの消化器系非運動症状としても高頻度に認められる。治療開始前の症状の程度を把握したうえで,ドパミン補充後の悪化分を副作用として評価することが重要である。消化管蠕動促進薬や下剤の併用を処方医に提案する際の根拠となる3),4)。〈解答:③〉

第2問

レボドパ製剤を服用中のPD患者が来局。「最近,においがわからなくなった」「夜中に大声を出して暴れるらしい」「便秘がひどくなった」という。これらの症状はPDと関係があるか。

  • ①関係ない(偶然の併発)
  • ②一部はPDの非運動症状として説明できる
  • ③すべてPDの非運動症状として説明できる
解説

嗅覚低下,REM睡眠行動障害,蠕動不全・便秘はいずれも図2に示すPDの代表的な非運動症状である。PDの非運動症状は中枢神経系から消化器・循環器・泌尿生殖器系まで全身に及ぶ。この多彩な非運動症状が,ドパミン補充療法の副作用と重複することが,PD薬物療法の難しさの本質である3),4)。〈解答:③〉

図2 PDの非運動症状と抗パーキンソン病薬による副作用の関係

第3問

レボドパ製剤と降圧薬を服用中のPD患者が来局。「立ち上がるとふらつく,立ちくらみがひどくなった」という。この起立性調節障害について,薬剤師として何を確認すべきか。

  • ①PD非運動症状(起立性調節障害)の可能性
  • ②降圧薬の過剰投与による副作用の可能性
  • ③どちらも念頭に置いて,血圧パターンと服薬状況を確認する
解説

PDの起立性調節障害は約50%の患者に認められる非運動症状である。しかし,レボドパによる血圧変動を「高血圧症」と誤診して降圧薬が追加されると,過度の降圧でさらに悪化するケースが非常に多い。両者の区別がつかないまま降圧薬を増やすリスクを念頭に,起立時・臥位時の血圧パターンと降圧薬の用量・追加時期を丁寧に確認することが求められる4)。〈解答:③〉

引用文献

1)Greffard S, et al : Motor score of the Unified Parkinson Disease Rating Scale as a good predictor of Lewy body-associated neuronal loss in the substantia nigra. Arch Neurol, 63 : 584-588, 2006

2)de Bie RMA, et al : Initiation of pharmacological therapy in Parkinson's disease: when, why, and how. Lancet Neurol, 19 : 452-461, 2020

3)Bloem BR, et al : Parkinson's disease. Lancet, 397 : 2284-2303, 2021

4)Schapira AHV, et al : Non-motor features of Parkinson disease. Nat Rev Neurosci, 18 : 435-450, 2017

2026年4月号