帝人ファーマ 睡眠時無呼吸症候群啓発イベント
「気づいているのに動けない」を家族の力で乗り越える
2026年1月19日,帝人ファーマが開催した睡眠時無呼吸症候群(SAS)啓発イベントで発表された「配偶者にいびきが気になる人&家族にいびきを指摘されたことがある人 47都道府県調査」の結果によると,配偶者のいびきや無呼吸を解消してほしいと思っている人は75%にのぼり,そして,その半数の人が配偶者への指摘を躊躇しているという。「気づいているのに動けない」そんな状況が生まれているのかもしれない。実際に検査を受け,これから治療に挑んでいこうという佐々木健介・北斗晶夫妻のほか,SASの治療を現在も続けているブラックマヨネーズの小杉竜一さんを迎えて,トークセッションが開催された。
佐々木健介さん,簡易検査で「中等症」
今回のイベントでは,佐々木健介さんが事前に受けた簡易検査の映像と結果が公開された。無呼吸・低呼吸指数(AHI)は27.1回/時間で,中等症に該当する結果であった。内村直尚 氏(久留米大学)によると,最長で約2分間呼吸が止まっていた場面もあり,精密検査を受けることが推奨された。
佐々木さんは「自分の寝ている姿を客観的に見て驚いた。2分も止まっているとは思わなかった」と率直な感想を述べた。北斗さんも「確かに静かになる時があって,その後ブンブンと音がしていた。正直うるさいと思っていたが,それが危険なサインだとは知らなかった」と振り返った。
佐々木健介さん
小杉竜一さん「51回/時間」の重症から治療へ
小杉竜一さんは,約2年前にSASと診断され,現在も治療中である。診断を受けたときのAHIは51回/時間という重症で,無呼吸の時間は最長89秒に及んだという。「かかりつけの耳鼻咽喉科で何度も検査を勧められていたが,聞き流していた。自分はいびきをかいていないと思い込んでいた」と,小杉さんは振り返る。「昼間ものすごく眠くなっていたし,起きたら足の裏が痛かった。よく働いているから疲れているのだと思っていたが,睡眠時無呼吸症候群のせいで,ただ酸素が身体に回っていなかっただけだった」と語った。
家族も気を遣っていびきを指摘していなかったといい,「いかに自分より早く寝るかが家族の課題だったらしい」とエピソードを披露。診断をきっかけに家族間で話し合う機会が生まれたと述べた。実際にCPAP療法を開始したところ,無呼吸の回数が減り,昼間の眠気も改善。「治療を始めて,生活の変化を感じたときに,やってよかったなと思った」と語った。
小杉竜一さん
生活者調査が示す「すれ違い」の実態
本イベントで発表された,「いびきを家族から指摘されたことがある」2,350名(以下「本人」)と「配偶者のいびきが気になる」2,350名(以下「配偶者」)の2グループを対象とした調査結果から,いびきを指摘される側と指摘する側の間に意識のギャップが存在することが浮き彫りになった。
本人側の調査では,日中眠くなる人が66.8%,起床時に疲れが残っている・頭痛がある人が62.4%と,SASに関連する症状を訴える人が多く,無呼吸を指摘された人も30.6%にのぼる。自身のいびきや無呼吸を解消したいと思う人は78.3%と高い割合を示した一方で,解消のために対策を行ったことがない人が67.4%と自分事として捉える難しさを示す結果となった。
一方,配偶者側の調査では,配偶者の無呼吸を見たことがある人が38.7%,配偶者のいびきや無呼吸を解消したいと思っている人が75.0%という結果となった。このうち,配偶者のいびきや無呼吸を解消したい理由としては「本人の健康が心配だから」(72.5%)が最も高かった。しかし,いびきや無呼吸について配偶者へ指摘することを躊躇する人は約半数(49.4%)にのぼり,いびきや無呼吸に気がついていても,簡単には伝えられないデリケートな話題であることがうかがえる。
夫婦仲が良いほど「心配」,悪いほど「うるさい」
興味深いのは,夫婦関係といびきへの感じ方の関連である。配偶者のいびきや無呼吸をみてどう感じるかという質問では,夫婦仲が良いほど「心配になる」と回答し,夫婦仲が悪いほど「うるさい」と感じる傾向がみられた。配偶者との関係が「とても良い」人では「心配になる」が50.4%,「うるさい」が29.8%であったのに対し,「まったく良くない」人では「心配になる」が7.1%,「うるさい」が46.9%であった。
北斗さんは「うるさいじゃなくて,心配に変えていきたい。家族は健康を支え合う存在。気になることがあったら遠慮せずに声をかけて受診を勧めてほしい」と語った。実は北斗さん自身も,旅行先で息子から「二人ともいびきがエグいよ」と指摘されたという。「いびきをかいていないと言い張ったら,健介に動画を撮られた。自分もすごいいびきをかいていて衝撃を受けた。私もしっかり検査したい」と述べた。
しかし,医療機関でいびきや無呼吸について診てもらったことがある人はわずか12.8%にとどまる。内村氏は「認知していても行動に移せていないというのが大きな問題」と指摘し,「病院を受診することは何となく怖いとか,病気が見つかったらどうしようかというマイナスのイメージがある。家族も遠慮して躊躇してしまい,結局お互いが伝えないことで病気が放置されてしまう」と述べた。
北斗晶さん
家族のために,一歩を踏み出す
SASの潜在患者は940万人と推計されるが,最も普及している治療法であるCPAP療法を受けているのは2024年3月時点で約88万人にすぎない。「気づいているのに動けない」という現状を変えるには,家族間のコミュニケーションが鍵となる。
小杉さんの「うっすら気になっていることに目を背けないで」という言葉,佐々木さんの「知らないことより知っていたほうがいい。知ることで対策ができるし,家族も安心できる」という言葉が印象的であった。
内村氏は「睡眠時無呼吸症候群は,放っておくと命にも関わってくる病気。しかし,早く病院に行って適切な治療をすれば改善していく。家族のために,また自分のために,睡眠の問題を家族で話し合いながら,ぜひ一歩を踏み出していただければ」と締めくくった。
(取材・文:編集部)