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第28回日本病態栄養学会年次学術集会が1月17日〜19日,京都府の国立京都国際会館で開催された。9つのシンポジウムのほか,約60の一般演題,86本のポスター発表など白熱した議論が展開された。「栄養」は薬剤師にとっても見逃せないテーマでもあり,学会の模様を編集部がレポートしたい。

一般演題15では「食物アレルギー」をテーマに議論が展開された。食物アレルギーの多くは幼少期に寛解するものが多いが,一部の患者では成人期まで持続する場合がある。このとき,幼少期のころは小児科を受診するが,成人期になるとどの科を受診したらよいのかわからないなどの問題が生じることから,成長にあわせた移行支援が必要である。そこで,食物アレルギー患者のセルフマネジメント能力の現状把握のために,国立病院機構福岡東医療センター栄養管理室はアンケート調査を行った。

調査結果によると,食物アレルギーの受け入れと安全対策について把握ができている患者は多いものの,自身のアレルギー物質の閾値の把握をできている患者は半数未満であることがわかった。また,アレルゲン食品の安全域内での摂取は食物アレルギーの治療につながることを,患者は理解しているものの,実際に継続して摂取しているのは44%である一方で,必要最低限の除去を実行できているのは55%であった。さらに,食物アレルギーに対し耐性を獲得したことがわかっているのにもかかわらず,摂取を控えている患者もいることがわかった。つまり,治療への理解はある一方で,食物アレルギーに対する学習機会の不足,除去食品や代替食品への理解不足などの課題が浮き彫りとなった結果といえる。

食物アレルギー移行期支援では,子ども自身がリスク管理能力を高め,食生活を自己決定できるようになることが重要である。保護者主体から本人主体への移行を進めることで,患者の自立を促進し,よりよいQOL向上につながる支援体制を整備することができるのである。

関連号
調剤と情報2025年3月号

食物アレルギー最前線


企画:中村 陽一(豊田地域医療センターアレルギーセンター)


食物アレルギーは、身近なアレルギーの一つです。食物アレルギーを有する患者に対して、薬物治療における注意点は薬剤師であればもちろん理解していますが、“常識”だけでは情報が不足してきていることはいうまでもありません。
本特集では、食物アレルギー最前線と題し、食物アレルギーの知識を整理するとともに、薬学部であまり学んできていない交差抗原性や「大人の食物アレルギー」、さらには食物アレルギーの治療や対応などについて、その“最前線”を解説します。