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第34回日本医療薬学会年会が11月2~4日,千葉県の幕張メッセとTKP東京ベイ幕張ホールで開催された。薬物療法をはじめ,教育,研究,医療DXなど幅広いテーマで61のシンポジウムが設けられたほか,ポスター発表は1,000題を超えるなど,さまざまな角度から白熱した議論が各会場で展開された。編集部がレポートする。

第34回日本医療薬学年会の会場となった幕張メッセ

評価ツールPILL-5の活用に期待

大坪博子氏(昭和大学大学院薬学研究科社会薬学分野)は,錠剤嚥下障害の評価ツールPILL-5日本語版(以下,PILL-5)を解説。同ツールの臨床での活用に期待を寄せた。

PILL-5は,米国で開発された患者自記式ツールを日本語訳したもので,嚥下困難者用食品の販売などを手掛けるニュートリーがライセンスを取得している。その内容は,錠剤・カプセル剤について,①喉につかえる,②胸のあたりにつかえる,③飲むことに怖さを感じる,④ 飲むのが難しく,必要な薬の全部を飲み切ることができない,⑤粉砕したり包んだりなど,何かしら調整をしないと飲むことができない ─という5項目の質問に各5段階(0点「なし」~4点「毎回あった」)で回答し,合計6点未満を正常と判定する。

大坪氏は,摂食嚥下障害が高齢者や男性に多いのに対し,錠剤嚥下障害は若年者や女性に多いと説明したうえで,薬局店頭などで錠剤嚥下障害の早期発見にPILL-5を使ってほしいと呼びかけた。一方で,PILL-5が合計6点未満であっても,2点以上の項目が1つでもあれば錠剤嚥下障害予備軍といえるとの認識を示し,薬剤師による「踏み込んだ服薬指導」の必要性を指摘。具体例として,服薬時にむせ込みのある患者であれば,水を何回かに分けて飲むように指導することや,服薬時の姿勢は顎を引いて飲むように伝えることなどを挙げ,適切な嚥下のサポートを求めた。

掲載号
調剤と情報2024年12月号
認知症パンデミック時代における 薬剤師の役割


企画:三輪 高市(鈴鹿医療科学大学 薬学部)


地域包括ケアシステムの構築のめどとなっている2025年には、高齢者の5人に1人が認知症になるといわれています。2040年には認知症患者数は800万人に達し、その社会的コストは21兆円を上回ると推計されています。認知症治療において、早期発見と継続した薬学的管理が、患者予後の面にも社会的コストの面にも重要であることは明らかです。したがって薬剤師が職能を発揮し、活躍することが期待されています。
本特集では、「認知症パンデミック時代における薬剤師の役割」をさまざまな視点で検討します。