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第34回日本医療薬学会年会が11月2~4日,千葉県の幕張メッセとTKP東京ベイ幕張ホールで開催された。薬物療法をはじめ,教育,研究,医療DXなど幅広いテーマで61のシンポジウムが設けられたほか,ポスター発表は1,000題を超えるなど,さまざまな角度から白熱した議論が各会場で展開された。編集部がレポートする。

第34回日本医療薬学年会の会場となった幕張メッセ

錠剤嚥下障害めぐり薬剤師の奮起求める

初日午後のシンポジウム「『錠剤嚥下障害』に取り組もう! 立ち上がれ薬剤師!─服薬に関する問題点と改善策─ 」では,内服薬が飲み込みにくい患者が潜在する現状に目を向け,薬剤師が積極的に関わるべきとの主張が繰り広げられた。

オーガナイザーを務めた昭和大学薬学部の倉田なおみ氏によると,錠剤嚥下障害とは,錠剤やカプセル剤,細粒剤など内服薬全般をうまく服用できない状況のことで,摂食嚥下障害と判定されなくても錠剤嚥下障害がみられる場合はある。また,摂食嚥下障害が高齢者で問題となりやすいのに対し,錠剤嚥下障害は若年者でも珍しくないのが特徴だ。

倉田氏は,錠剤嚥下障害が引き起こす問題として,介護の現場で錠剤が不適切に粉砕されている現状を指摘した。203の介護老人保健施設の内服薬服用者約2,000名を対象とした調査結果を示しながら,錠剤を粉砕しないと飲めない人が20%に上ることや,服薬介助を要する場合は80%以上がゼリーや食事に混ぜて服薬しているとの実態を紹介。服薬介助者が粉砕している薬剤には徐放性製剤なども含まれることから,「薬剤師に相談することなく,飲めなければ錠剤をつぶすということが施設では当たり前」の状況に危惧を示し,その背景にある錠剤嚥下障害には,製剤学を学んできた職種である薬剤師が関わらなくてはいけないと訴えた。

掲載号
調剤と情報2024年12月号
認知症パンデミック時代における 薬剤師の役割


企画:三輪 高市(鈴鹿医療科学大学 薬学部)


地域包括ケアシステムの構築のめどとなっている2025年には、高齢者の5人に1人が認知症になるといわれています。2040年には認知症患者数は800万人に達し、その社会的コストは21兆円を上回ると推計されています。認知症治療において、早期発見と継続した薬学的管理が、患者予後の面にも社会的コストの面にも重要であることは明らかです。したがって薬剤師が職能を発揮し、活躍することが期待されています。
本特集では、「認知症パンデミック時代における薬剤師の役割」をさまざまな視点で検討します。