九州・中国エリアに根を張る薬局として
──株式会社なの花九州・さくら薬局の事業概要と,九州・中国エリアでの展開状況を改めてお聞かせください。
現在,九州・沖縄・山口県を中心に80店舗を展開しています。もともとは福岡県糟屋郡から始まりました。私自身は薬剤師ではなく,福岡和白病院で医療事務や総務をやっていた人間です。1993年(平成5年),ちょうど医薬分業が本格化する時期に「薬局経営をやってみたらどうか」と声をかけられたのがスタートでした。当時はいまのように開業から半年〜1年かけて黒字化するわけではなく,1〜2カ月で黒字になるような時期。氷河期といわれるいまの環境とは,ずいぶん違いました。
──2025年4月,トータル・メディカルサービスから「株式会社なの花九州」へ商号変更し,九州の連結子会社3社と合併されました。「地域に根ざした薬局」という現在のあり方は,どんな流れのなかでかたち作られてきたのでしょうか。
もともと九州には,福岡・大分・南九州など,それぞれの地域に長年根を張ってきた調剤薬局グループがありました。それらが同じメディカルシステムネットワーク(MSN)グループの傘下に集まり,2025年4月に合併して株式会社なの花九州が発足した,というのが直近の流れです。
ただ,合併からまだ1年ですから,「なの花九州一本」という感覚にはなりきっていません。屋号もさくら薬局・永冨調剤薬局・鶴丸調剤薬局・白十字総合薬局の4種類を残していて,それぞれの地域でこれまで親しまれてきた看板を大切にしています。
第15回大会の様子
PayPayドームに冠を掛ける意味
──本大会の規模感について教えてください。例年どのくらいの参加者・チームが集まり,どんな顔ぶれが走る大会なのでしょうか。
2026年大会(第15回)は史上初めて参加ランナーが1万人を超えました。2009年の第1回大会の参加者は約2,200人でしたし,またコロナ禍による中止などもありましたが,大会の規模は年々大きくなってきています。正直,ここまでのイベントに成長するとは思っていませんでした。
参加者は市民ランナーが中心ですが,優勝チームは2時間ほどで42.195kmを走りきってしまうなど,本格的なチームも参加しています。一方で,職場単位や学校の同級生,地域のクラブで参加される方も多く,ファミリーランや小学生ミニリレーマラソンなどもあり,子どもから大人まで幅広い年代の方に参加していただいている印象です。
第15回大会の様子
──これだけの規模の市民スポーツイベントに,2009年の第1回大会から長年「トータル・メディカルサービス」(T.M.S)名義で特別協賛を続けてこられました。協賛を始められた経緯と,長く続けてきた理由・想いを教えてください。
もともとは,名古屋ドームで同じような催しがあり,人気があったということで,「九州でもやりたいんですけれども,どうですか」というご相談をTVQ九州放送さんからいただいたのがきっかけです。私自身も趣味で昔から走っていたものですから,「それ面白そうだね」ということで,話が具体化していきました。
参加者の属性をみると,福岡だけでなく熊本や佐賀など九州各地,山口から来られる方も多く,当社の店舗展開エリアとちょうど重なります。地域住民に「走る場」を提供する取り組みとして,九州・山口地区に定着したのかなという手応えはあります。
これだけの方に参加していただき,楽しみに来てくださっているので,できる限り本イベントを続けていきたいと思っています。
──全国で多くのスポンサーシップの選択肢があるなかで,なぜ「市民参加型のスポーツイベント」だったのでしょうか。
「なぜ」と考えたことは正直なところありません。ただ,九州では福岡ソフトバンクホークスの人気は高いですし,市民にとっては憧れの存在です。そのチームの本拠地球場の人工芝の上に立つという経験はなかなかできるものではないですし,普段入れないところで思いっきり走れるというのは楽しいんじゃないか,というくらいで,直感的な話だったと思います。実際,会場ではソフトバンクホークスのユニフォームを着ている子どもたちも大勢いますし,参加者にとって特別な体験になっていればよいなと思います。
大野繁樹氏
社員にとってのリレーマラソン
──本大会には貴社の社員はどのようなかたちで関わっていますか。走る方,応援する方,運営に関わる方など,関わり方の幅も含めて教えてください。
ランナーとして走るのが大体20〜30人で,若手・中堅からベテランまでさまざまな社員が参加しています。また,毎年ブースを出しており,そこにも20人ほどの社員が参加しています。ブースでは,飲料などの物販や子ども薬剤師体験の他,スポーツファーマシストの資格をもつ薬剤師が,子どもに薬についての○×クイズをやったり,薬の解説をしたりしています。
それから,大会当日限定で「みずほPayPayドームリレーマラソン店」という店舗を「つながる薬局」(LINE公式アカウント)上に立ち上げています。この店舗は実際に処方箋を受け付けるわけではなく,当日会場内で撮影した写真をLINE上で送信してもらうための店舗です。受け付けた写真は,ホークスビジョンに放映される仕組みとなっており,"本日の記念"としてたくさんの方に参加していただきました。
○×クイズの様子
実は,この写真の送信手順は普段「つながる薬局」で処方箋を送るときとまったく同じ構成です。楽しみながら「処方箋送信」を体験していただくことで,「待ち時間ゼロの薬局」など,当社が普段から取り組んでいるサービスの便利な使い方を知っていただく機会にしています。
──このイベントは社員にとってどんな受け止め方をされていますか。経営者として,どんな場にしていきたいかも含めてお聞かせください。
第1回大会から,ずっと土曜日開催にこだわっています。それはなぜかというと,走って,打ち上げをして,どんちゃん騒ぎして,次の日はゆっくり休んで月曜日からまた仕事,という流れにしたいという想いからなんです。社員にゆっくり楽しんでもらいたい,というのが一番の理由ですね。
実は,私自身も毎年走っています。経営者として何か特別なことをしたいわけではなく,社員と一緒に走って,一緒に打ち上げをする。社内の一体感が生まれる場になっていれば,それで十分かなと思っています。
店頭で受け取る手応え
──1万人もが参加する会場の景色を見て,経営者としてどう感じていらっしゃいますか。
大会当日,会場を見渡すと「さくら薬局」と書かれたゼッケンをつけて走っている方が1万人もいるわけです。子どもから職場仲間,地域のクラブまで,いろんな方が「さくら薬局」のロゴを背負ってドームの中を走ってくれている。私から見ると,みんなうちの社員に見えてしまうんですよ(笑)。「すごい会社だな」という感覚を毎年感じていますね。
ランナーを応援する参加者
──大会の協賛だけでなく,普段の薬局運営でも地域との接点を作る工夫をされていると聞きました。具体的に教えてください。
大会のブースで子ども薬剤師体験をやっていると,お母さんから「さくら薬局って,うちの近所だとどこにありますか?」と聞かれることがあります。普段はさくら薬局に縁のない方も,こうしたイベントを入り口に,意識してくださるようになるのかなと感じます。
私は「薬局は薬を渡すだけの場所じゃない」と思っていて,昔から薬に頼らない健康づくりを究極のテーマにしてきました。言い換えれば,地域の健康を支えるのが薬局であるということですね。
例えば,店舗内にマッサージチェアを置いて,どなたでも使っていいですよという空間を作ったり,管理栄養士も配置して栄養相談を積極的にやったりしています。また,公民館にも出向いて「地域カフェ」という名前で薬剤師や管理栄養士が出張イベントを行っています。スポーツイベントへの協賛も,薬局と地域の接点の一つになっていますし,普段の薬局運営においても,接点がどんどん増えればよいと思っています。
おわりに
──最後に,地域に根ざした薬局でありたいと考えている全国の薬剤師たちに,メッセージをお願いします。
継続的に一つのことをやり続けるということが,僕は一番大きいのかなと思っています。
私自身,40代で血圧の薬を飲み始めたときに「薬なんか飲んでおれるか」と思ってジョギングを始めたんです。つまり「薬に頼らない健康づくり」を身をもって体現してきたわけです。それが,いまはさくら薬局の考え方として,社員にも地域にも伝わってきているのかなと感じます。
大会の協賛という視点でみても同じで,第15回大会まで続けてきたからこそ1万人の方が「さくら薬局」を背負って走る景色が生まれました。薬局のイメージを変えていくにも,地域のなかで信頼を築いていくにも,こうした地道な積み重ねがすべてだと思います。
薬剤師の皆さんには,調剤はもちろん当たり前ですが,「薬局は薬を渡すだけの場所じゃない」という視点をもって,患者さんと関わってほしいと思います。「処方箋を持っていなくても,いつでも利用していただける薬局」を一緒に作っていけたら,それが地域に根ざすということなのではないでしょうか。
第15回 さくら薬局 みずほPayPayドームリレーマラソン2026
2026年5月16日(土),みずほPayPayドーム福岡で「第15回 さくら薬局 みずほPayPayドームリレーマラソン2026」が開催され,史上初めて1万人を超える参加者がドームに集まった。
舞台は,ドーム内グラウンドから駐車場,3階デッキを巡る1周約2kmの特設周回コース。「42.195kmリレーマラソン」「5時間耐久リレーマラソン」「20kmリレーマラソン」──リレー3種目だけで1,160を超えるチームがエントリーする。今大会から始まった新種目「小学生対抗!ミニリレーマラソン」や,恒例のティラノサウルスレースやファミリーラン(800m)なども組まれ,未就学児からシニアまで,幅広い層が会場を埋めた。当日の様子をお伝えしたい。
親子で楽しむランニング
午前8時10分,最初の種目としてファミリーランがスタートを切った。小学生とその保護者を中心としたランナーであるが,未就学児の姿もあった。800mの特設コースを親子で楽しそうに走る姿があちらこちらで見られた。また,ファミリーランでは,ゴール後にブルペン投球を体験できるプランもあるなど,子どもも親も心躍らせる姿が印象的であった。
リレーマラソンスタート
みずほPayPayドームは,日本で初めて開閉式屋根を採用したドーム球場である。当日は晴天に恵まれ,午前中は屋根を開ける「ルーフオープン」での開催となった。青空のもと,「さくら薬局」のロゴを背負ったランナーたちが続々と集まる。
リレーゾーンへ向かうさくら薬局チーム
午前9時55分,42.195kmリレーマラソンの号砲が鳴った。飛び出していくランナーたちは,まるで本格的なマラソン大会のようなスピードで駆け抜けていく。上位チームは1周2kmのコースを5分台のペースで周回を重ねており,参加者のレベルの高さがわかる。一方で,市民ランナーや小学生ぐらいの子どもが走るチームも多く,競技というより,健康づくりや仲間との時間を目当てに走る人も少なくない。それぞれのペースで,それぞれの目標に向かって走っていく姿は,この大会が幅広い層に「走るきっかけ」を提供している場であることを示していた。
リレーマラソンは,1チーム最大15人が特設コースを交代で走り,襷をつないで42.195km走破や5時間耐久などを目指す競技である。1人あたりの距離は走力に応じて分担できるため,本格的なランナーから走力に自信のない参加者まで,同じチームで楽しめる。こうした競技形式から,コース上には走者が襷を受け渡す「リレーゾーン」が設けられている。そこでは,襷を渡したランナーも,受け取って次の周回へ飛び出していくランナーも,どちらも笑顔だった。
さくら薬局からも3チームがエントリーしており,大野氏自身もその一員として走っていた。
さくら薬局ブース
みずほPayPayドームのグラウンド内に開設されたさくら薬局ブースは,朝から賑わっていた。1日限定50名の「子ども薬剤師体験」では,ラムネやマーブルチョコを錠剤に見立てて分包体験をしていた。白衣に身を包んだ子どもたちは,本物の分包機を前に少し緊張しながらも分包作業を体験していた。さくら薬局には20名以上のスポーツファーマシストが勤務しており,会場内でスポーツファーマシストの広報活動や,子ども向けに○×ゲームなどで盛り上がりをみせていた。
子ども薬剤師体験の様子
各チームのゴールとその後
12時3分,42.195kmリレーマラソン男子第1位のチームがゴールした。記録はなんと2時間8分52秒。リレーマラソンとはいえ,男子フルマラソンの日本記録が2時間4分台ということを考えれば,どれだけのスピード感で走っていたかがわかる。
スタートから3時間を超えると,ゴールするチームも増えてくる。ゴール後にスタンドで身支度を整えたり,ビールを片手に今日の健闘を称えあう参加者の姿がみられるようになった。各チーム,大会後の打ち上げやBBQに向けて準備を整えているようであった。
取材中,何人かのさくら薬局の社員に大会への想いを聞いたところ,「特別感みたいなのはあまりなくて,毎年楽しんで参加しているだけです」と口にしていた。第1回大会から土曜開催を貫いてきた15回の積み重ねは,社員のなかで「特別な行事」を超えて「日常の一部」になっている。ある社員は「今日のイベント,もちろん課題や改善点はあるものの,大会としては成功だったと思います」と話してくれた。1万人を超える参加者,「つながる薬局」店舗への登録数,子どもたちの笑顔。会場で見たどの景色も,それぞれが今日の手応えだと伝わってきた。
1万人もの市民が「さくら薬局」のゼッケンを背負ってドームを駆け抜けた1日。それは「薬局は薬を渡すだけの場所ではない」という大野氏の考え方が,地域のなかで浸透している姿そのものであった。
✓大会概要
第15回 さくら薬局 みずほPayPayドームリレーマラソン2026
開催日:2026年5月16日(土)/会場:みずほPayPayドーム福岡
主催:TVQ九州放送,福岡ソフトバンクホークス/特別協賛:さくら薬局
みずほPayPayドームリレーマラソンを通じて伝えたいこと