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150人超のアイドルプロジェクトのなかからデビューを勝ち取った,アイドルグループ「まぶだちゅ!」。その赤色担当としてステージに立つりりあさんは,アイドルと薬学生の二刀流をやり遂げ,2026年3月,第111回薬剤師国家試験に見事合格した。
しかし,その道のりは平坦ではなかった。「本当はアイドルを辞めるつもりだった」と語る彼女が,両方の夢を手放さなかった理由。家族,メンバー,ファン,スタッフに支えられた約8カ月間のライブ活動休止と国家試験合格までの日々を聞いた。

まぶだちゅ!について

──まず,自己紹介をお願いできますか。

「あなたの毎日にちょっとの笑顔と最高の友達を!」をコンセプトに活動しているアイドルグループ「まぶだちゅ!」で赤色担当をしています,りりあです。現在はアイドル活動をメインにしながら,モデルや女優としても活動しています。

──まぶだちゅ!はどのようなグループですか。

もともと150人以上のメンバーが在籍する「Zero Project」というリーグ制のアイドルプロジェクトがあって,動員や集客の実績で昇格・降格が決まる完全実力主義の世界でした。そのなかで行われたリリースイベントで売上1位を獲得したチームが,「まぶだちゅ!」で,新メンバー2名が加わり,現在は7人体制のグループとして活動をしています。

がん専門薬剤師に憧れて

──薬学部に進学しようと思ったきっかけを教えてください。

うちは医師の家系で,祖父が患者さんに感謝される姿をそばで見て育ちました。そういった姿に自然と憧れて,医療の世界に進みたいと思っていました。医学部や薬学部を漠然と考えていたんですが,高校生のときに「がん専門薬剤師」の存在を知って,「私もなりたい!」と思ったのが薬学部を目指したきっかけです。

@riria_camawa より

コロナ禍に始まったアイドル活動

──アイドル活動を始めたのはいつですか。

アイドル活動の前,大学2年生のときくらいからSNS活動やモデル・お芝居の仕事をしていました。ちょうど新型コロナウイルス感染症が流行していて,授業がすべてオンラインでした。せっかく大学生になったのに,何もできないまま過ぎてしまうのかなという不安を感じていたんです。そんな日々を過ごすなかで,Instagramで活動に関するお誘いをいただいて,「何か少しでも自分にもできることがあったらいいな」という気持ちで活動を始めることにしました。

──薬学部は講義や実習も多く,いわゆる普通の大学生と比べると忙しいといわれます。それでもアイドルの世界に飛び込もうと思えた理由は何ですか。

正直そのときは,今やるべきことに必死に向き合いすぎて,学年が上がってどうなるかとか,国家試験がどうかとか,未来のことはあまり考えていなくて(笑)。「忙しくなってもなんとかしよう」というタイプなんだと思います。でも,そういう性格だからこそ,アイドルとして活動できているんだと思います。

あと,Zero Projectが完全に個人単位のリーグ制だったことも大きかったですね。もし自分が活動できなくなっても,チームに迷惑をかけずに済む仕組みだったので,薬学部との両立を考えたときに「これならできる」と思えました。

@mabudachuより

夢をみさせてくれる存在

──りりあさんにとって,アイドルとは何ですか。

小さい頃から,テレビの向こうで歌って踊る人たちにずっと惹かれていました。でも,うちは厳しい家庭だったので,芸能やアイドルの世界は自分とは縁のないものだと思っていたんです。医療の道を目指す気持ちとはまた違う,純粋な憧れですね。私にとってアイドルは,元気をもらえる存在であり,夢をみさせてくれる存在です。

──アイドル活動で一番うれしかったことは。

ファンの方と気持ちを共有できた瞬間ですね。さきほどお話ししたように,昇格・降格が個人レベルで決まるシステムだったので,基本はひとりの戦いなんです。でも,リーグを上がれるようにファンの方が応援してくださったり,うまくいかない時期には「大丈夫だよ」と声をかけてくださったり。ひとりで戦っているはずなのに,ひとりじゃないと思える。それが,アイドルをやっていてよかったと心から思える瞬間です。

睡眠2時間の日々

──薬学部とアイドル活動の両立は,どんな日々でしたか。

TikTokに当時のVlogを上げているんですけど,たとえばある日のスケジュールだと,深夜1時半に配信を終えて寝落ちして,3時半に起きてファンの方へのお手紙を書いて。メイクとヘアセットを済ませて6時半に家を出て,9時から大学の講義を受けます。夕方にはライブに向かって,ステージに立って,特典会が終わってメンバーと別れるのが21時過ぎ。帰宅して23時からまた配信をして,そのあと勉強。お風呂に入って寝るのは深夜3時で,また3時半に起きる。そんな日もありました。もう気力だけで走っていた感じです。でも不思議と,つらいよりも楽しいが勝っていたんですよね。

──周囲にはアイドル活動のことを話していましたか。

ずっと秘密にしていました。大学では誰にも明かさずに活動していたんです。でも,TikTokに上げた動画が友達のおすすめに表示されたことがきっかけで,だんだんと知られるようになりました。正直,最初はどう思われるか不安だったんですけど,知ってからはむしろ応援してくれるようになって。ノートを見せてくれたり,講義のポイントを教えてくれたり。友達が支えてくれたからこそ,薬学部を留年せずに乗り越えられたと思っています。

「本当は,辞めるつもりだった」

──活動休止の決断について聞かせてください。

6年生になると卒業研究と国家試験の勉強とアイドル活動を同時に抱えることになるのですが,卒業研究とアイドル活動で1日が終わってしまって,国家試験の勉強にはとても手が回りませんでした。実は,そのとき私は7月でアイドルを辞めて,卒業したら薬剤師として働こうと思っていたんです。でも,メンバーや事務所のスタッフさんと何度も話し合うなかで気持ちが動いて,アイドルを辞めるのではなく活動を休止することを選びました。

──アイドルを続けると決めた直後に,活動を離れる。その時間はどんなものでしたか。

それが一番つらかったですね。チームとの話し合いで「やっぱりアイドルを続けたい」という気持ちが強くなっていたのに,目の前には国家試験がある。勉強しなきゃいけないとわかっているのに,自分のメンバーカラーのアクセサリーを探したり,他のメンバーのSNSをチェックしたり,出られるイベントには出たくなるし,自分以外のメンバーが立っているステージの映像をずっと見てしまって。あと,ファンの方が離れていくんじゃないかという不安も消えませんでした。勉強にもアイドルにも中途半端な自分がいて,どこにも全力を出せない。あの時期が,いちばん苦しかったと思います。

──それでも薬剤師免許を取ろうと思えたのは,なぜですか。

やっぱり,周りの人の存在が大きかったです。両親は6年間,決して安くない学費を払って薬学部に通わせてくれました。アイドルグループにとって,メンバーの活動休止はダメージの小さいことではありません。それでも,他のメンバーは「行っておいで」と送り出してくれました。事務所のスタッフさんも,ずっと応援してくれていました。これだけの人が自分のために動いてくれているのに,免許を取らずに戻るわけにはいかない。そう思ったから,頑張れたんだと思います。

模試95点─合格ラインも知らなかった

──国家試験の合格ラインが210〜235点といわれるなか,9月の模試で95点だったそうですね。当時どのような心境でしたか。

恥ずかしい話なんですが,当時は合格ラインが何点かすら知りませんでした。95点と聞いてもあまり実感がなくて,「頑張ればなんとかなる」と思っていたんです。大学の先生も「大丈夫だよ」と言ってくださっていたので,どこか安心してしまっていた部分がありました。今振り返ると,国家試験の厳しさをわかっていなかったんだと思います。

──Xでりりあさんは「最後の2カ月は人生でいちばん頑張った」と投稿されていましたが,その2カ月はどのようなものでしたか。

実は休止してからも,11月頃まではイベントに出たり,1月頃まで毎日配信を続けたりしていたので,勉強だけに集中したのは本当に最後の2カ月でした。人生で一番勉強した期間だったと思います。

ただ,そのなかで大きな挫折がありました。私の通っていた大学では卒業試験が2回あるのですが,ずっと一緒に勉強していた友達がその試験で卒業できないことが決まってしまって,そこからは一人で立ち向かうことになりました。

2回目の卒業試験では,問題を見ても何もわからない。試験中にパニックを起こして,涙が止まりませんでした。その本試験にはとても低い順位で落ちてしまって,それまで試験に落ちたことが一度もなかったので,自分の中で何かが崩れた感覚でした。

インタビューに応えるりりあさん

「りりあの価値は変わらない」

──涙が止まらないほどの状況から,どうやって立て直したのですか。

何もできなくなっていました。学校に行く気力もなくて,家のソファーにずっと座っているような日もあって。2回目の卒業試験の前日も,プレッシャーでパニックになって泣いてしまっていたんですが,そのとき事務所のスタッフさんから電話がかかってきて,「受かっても落ちても,りりあの価値は変わらないから」と言ってくださったんです。前日だったから,すごく響きました。

家族も,そんな私を見かねて「自習室まで送ってあげるから」と無理やり連れ出してくれました。メンバーやファンの方からも「りりあなら大丈夫」と何度も声をかけてもらって。周りの人たちの支えがなかったら,立ち上がれなかったと思います。

──そして,国家試験本番を迎えたわけですね。

はい。試験が終わった後,どうしても怖くて,自分では自己採点をできませんでした。ずっとSNSでボーダー予想を眺めているだけの日が続いて。それを見かねた父が,私が外出している間にこっそり採点してくれていたんです。帰ってきたら「大丈夫そうだよ」と教えてくれて。最後まで,家族に支えられていました。

合格発表は,メンバーと一緒に見ました。番号を見つけた瞬間,全員で号泣しました。

アイドル×薬剤師。これから

──合格して,いまどんな気持ちですか。また,薬剤師として働くことは考えていますか。

ファンの方からも「おめでとう」という声をたくさんいただいて,本当にうれしかったです。なかには薬剤師の方もいらっしゃって,「調剤は経験しておいたほうがいいよ」とアドバイスをくださったりもしました。でもいまは,アイドルとして芸能の仕事を頑張りたいと思っています。ただ,薬剤師さんへの憧れも変わらずあるので,いつか薬剤師として活躍できる日が来ればいいなとも思っています。

──「アイドル×薬剤師」として,やってみたいことはありますか。

TikTokに「アイドル×薬学生の日常」というテーマでVlogを投稿したことがあるのですが,そのとき,私と同じように医療系の大学に通っていて,芸能の仕事に憧れているけど踏み出せないという方からメッセージをいただいたんです。私がアイドルとして頑張りながら,薬剤師国家試験に合格できたことで,後輩たちの道を切り拓いていけたらいいなと思います。

また,薬剤師免許を取得したことを活かして,正しい美容やお薬の知識を届けていくことにも挑戦したいです。「アイドル×薬剤師」だからこそ届けられることを見つけていきたいと思います。

みんなに支えられて

──最後に,この記事を読んでくださっている方にメッセージをお願いします。

何度も「もう無理かもしれない」と思いました。でもそのたびに,家族が,メンバーが,ファンの方が,事務所のスタッフが,大学の友達が,手を差し伸べてくれました。ひとりでは絶対にここまで来られなかったと思います。

実習で出会った薬剤師の先生方が,患者さんのためにまっすぐ動いていらっしゃる姿は,いまでも私の目標です。私はまだ薬剤師としてのスタートラインにも立てていませんが,アイドルとして発信しながら,いつかその姿に近づけるように頑張ります。

アイドルと薬学生を両立することは大変でした。でも,大変だからこそ支えてくれる人のありがたさに気づけたと思います。皆さんの周りにも,きっとそういう人がいると思うので,つながりを大切にしながら,前を向いてほしいなと思います。

プロフィール
りりあ

りりあ

アイドルグループ「まぶだちゅ!」赤色担当。京都府出身。医師の家系に生まれ,高校時代にがん専門薬剤師に憧れて薬学部へ進学。大学2年次よりアイドル活動を開始し,薬学部との両立を続ける。6年生の夏から,卒業研究と国家試験対策のために約8カ月間,ライブ活動を休止。2026年3月,第111回薬剤師国家試験に合格。同月29日にアイドル活動に復帰した。

X:@riria_mabu / Instagram:@riria_camawa


まぶだちゅ!

まぶだちゅ!

株式会社Origamiが運営する7人組アイドルグループ。150人以上が在籍したアイドルプロジェクト「Zero Project」のなかで,動員や集客の実績をもとにトップに選ばれた5人によって誕生。現在はZero Projectから独立し,新メンバーを加えた7人体制で都内のライブハウスを中心に活動している。

2026年5月号