退院後・外来通院患者に対しても継続したケアを提供
──病院薬剤部の中枢を担っていた枦先生が,あえて『外』に出て門前薬局を開設した理由は何だったのでしょうか。
高度急性期病院の現場では,どうしても入院患者さんや重症患者さんへの対応が最優先されます。その結果,救急外来から帰宅するような軽症の患者さんや,外来通院のみの患者さんに対して,一歩踏み込んだフォローアップを行うための「時間的な余裕」が,病院という構造の中では不足していたのです。
せっかく病院側で救急の患者さんを多く受け入れる努力をしていても,薬剤師のマンパワーなどの兼ね合いから外来患者さん一人ひとりと向き合う時間は確保しにくいのが現状。そのため本来,薬剤師が介入するべき服薬指導や生活上の注意点などの説明が不十分なまま地域へ戻されてしまうケースが数多く,そこに課題を感じていました。
──病院の外側にケアをつなぐ受け皿が必要であったということですね。
そうですね。例えば,術前中止薬の確実なチェックや,院外薬局では指導が徹底されにくい喘息・COPD患者さんへの吸入指導。こうした点も病院での臨床経験を活かし,地域の方々の健康サポートに還元できる点であると感じています。
そして夜間・休日も含め,救急外来の患者さんに対し,病院の「すぐ外」で病院と同等のクオリティで夜間・休日も対応できる受け皿を作りたい ── そう強く思ったことがきっかけとなりこの場所で開局しました。
365日・24時間対応し,経営と安全を両立する体制の工夫
──夜間・休日など営業時間外も病院からの受け入れ体制を整えていますが,どのように運用されているのでしょうか。
当薬局は,通常の開局時間外であっても,患者さんから依頼があれば365日24時間いつでも開局して対応するスタイルをとっています。経営的観点から,営業時間外には薬剤師1名のみ。当薬局は私を含めた常勤薬剤師2名と管理栄養士1名で構成されています。このメンバーのみで夜間・休日も請け負うことは難しいので,夜勤経験のある薬剤師の先生にも手伝ってもらい運営しています。さらに病院との緊密な連携とICTの活用により,少人数で効率的に回せる体制を構築しました。
──病院との緊密な連携とICTの活用について具体的に教えてください。
作業面では,処方箋を写真撮影するだけで自動入力するシステムや,バーコードと重量監査を組み合わせたシステムを導入し,一人体制でも物理的にミスが起こらない構造を徹底しています。また,待機室には薬剤師が心身ともに無理なく待機できる環境を整えています。
──患者さんからの反響は?
夜間や休日に対応していることにまず驚く患者さんやご家族の方が多いです。たとえ入院とならずとも不安を抱えている方が多いので,そうした状況下で十分な服薬指導を介して安心を届けられる存在となっているのではないかと感じます。
地域のセーフティネットであり続ける
──夜間や救急外来に訪れた際,必要なものが揃っている状況をどう維持されていますか。
本来,より多くのOTC医薬品を取り揃えることが理想ではあるものの,経営上なかなか難しいというのが実際のところ。とはいえ,在庫を抱えすぎないよう考慮しつつも,夜間や救急外来受診後に必要とされる絆創膏・ガーゼ・フィルムなどの衛生用品,経口補水液や栄養補助食品,一部のOTC医薬品などは,適正な数を確実に揃えています。夜間に「実はガーゼも必要だった」という切実なニーズに即座に応えられることも,地域のセーフティネットとしての実質的な機能につながると考えています。
──管理栄養士もスタッフとして加わっているそうですね。
はい。病院時代に栄養サポートチーム(NST)などで多職種連携をしていた経験から,薬だけでなく食の面からも地域を支えたいという想いがありました。地域の健康相談会に参加し,栄養相談も実施しています。ただ,病院と比較すると薬局へ患者さんの栄養状態について詳細の情報が回ってくることがなく,思い描く介入ができていないことに悔しさが残ります。
店頭の衛生用品・栄養補助食品(一部)
病院薬剤師の経験・視点を実践し,治療効果を最大化する
──枦先生の薬局だからこそ提供できる価値とは,何でしょうか。
病院時代と同等の質の高い服薬指導にあると考えています。服薬指導時には臨床意思決定支援ツールの「UpToDate®」なども活用し,単に薬を渡すだけでなく,その背景にある病態や診断フローまで踏み込んで解説できることも一つの強みです。一例ですが,検査の裏側にある意味を説明すると,患者さんは自身の治療に興味を強くもち,そこから他の健康に関するお話や次の来局につながることも多いですね。どれほど患者さんに興味をもって話を聞いてもらえるのか,ここも薬剤師の腕の見せどころですよね。
──具体的な指導による治療効果の例を教えてください。
吸入指導が一つの例ですが,単に手技を教えるだけでなく,症状の経過を定期的に確認し,「正しく使用できているか」「効果が出ているか」を評価します。患者さんの主訴から医師の診断を推測し,それに基づいた適切な情報提供を行う。こうした病院薬剤師の視点を薬局でも実践することが,治療効果の向上に直結すると確信しています。
待合室内に掲示されているコラムも充実
患者さんに選ばれる薬局であるために
──最後に,今後の抱負をお聞かせください。
今後は緊急の在宅対応ニーズにも応えつつ,質の高いフィードバックを病院側に返し続けることで,薬局薬剤師が介在する価値を証明していきたいです。令和8年度の改定案でも議論されているとおり,これからは24時間対応も具体的な実績がよりシビアに評価されるようになります。だからこそ,夜間・休日対応や高度な臨床判断といった,他がやりたがらない面倒なことを本気でやる。そこにこそ,患者さんや医療機関から真に選ばれる薬局としての道が開けると信じています。
みなとファーマシー
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千葉県浦安市当代島3丁目6-41
病院経験を武器に挑む救急門前での24時間対応