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「RxInfo TV」第7回は「パラレルシンガー」の七海うららさんに注目しました。リアルとバーチャルを行き来しながら歌手として活躍されていますが,その背景には「脳腫瘍」「がん」という病気の経験から「好きなことをやらないともったいない」「患者として救われたエンタメのチカラに対する想い」があるからとのことです。そんな七海うららさんに「エンタメのチカラ」について教えてもらいました。

七海うららとは?

—— まずは七海うららさんのキャッチフレーズ「パラレルシンガー」について教えてください。

いわゆる「シンガー(歌手)」のスタイルの一つなのですが,実際のライブではリアルの姿で歌を届けつつ,オンラインライブへの出演などではバーチャル(アバター)の姿も加わるなど,その場に合わせてリアルとバーチャルで姿を変えながら両立するスタイルで活動しております。


リアルライブのワンシーン



—— 音楽活動をはじめるきっかけに「脳腫瘍」や「がん」の経験が関係しているとのことですが,どのような経緯なのでしょうか?

私は,学生時代から「歌手になる」という夢を追いかけていたわけではありません。ただの趣味として,軽音部などで音楽を楽しんでいた普通の大学生でした。

その大学生の頃,「頭痛がひどいな」と思い病院に行ったら「片頭痛です」と言われ,疲れが出たのかなと思いました。しかし,念のためと受けた検査で小脳に脳腫瘍があることがわかったんです。また,一般企業に就職したのですが,些細な違和感があったことから,こちらも念のため検査を受けたところ今度は,乳がんと診断されました。脳腫瘍は摘出手術を,乳がんも片胸の全摘手術を受け,現在も経過観察中です。

この2つの大きな病気を経験して,命は有限であることを強く感じ「一度きりの人生,本当にやりたいことをやらずに終わってしまうのはもったいない。好きな歌で人の心を動かしたい」と思ったのが音楽活動の原点です。実際には,まずはやれることからやってみようと,家で録音とSNSへの動画投稿から始め,その後,ファンの方やさまざまな人,経験に出会い,アーティストとして活動させていただいています。

「エンタメのチカラ」が患者にチカラを与える

—— 闘病のなかで「エンタメのチカラ」を感じたということですが,具体的にはどのようなものなのでしょうか?

手術の後,痛み止めが効かないくらい身体が痛いときがあったのですが,そんなときに好きな音楽に触れると痛みが和らいだり,気持ちが少し楽になったりしたんです。なので,入院中は,好きなアーティストのライブ映像やミュージカルをたくさん観ましたし,「エンタメには目には見えないチカラがあるんだな」ということを実感しました。

—— 七海さんの楽曲は,疾走感のある楽曲や可愛らしい楽曲が多いように感じました。また,メジャーデビュー曲の「ダイヤノカガヤキ」を代表するように,各楽曲に「七海うらら」の経験や想いを感じる歌詞がたくさんあると感じています。「エンタメのチカラ」を届けるための音楽活動への想いを教えてください。

私の人生を歌に乗せて,その歌で人の心を動かせるアーティストでありたいと思って活動しています。

「悩み」「挫折」「孤独」「つらいこと」,私はいろいろなことを経験してきました。そしてそれは,皆さんの苦しみと重なる部分も多いのだと思います。だからこそ,皆さんの心に届く歌を歌いたいと思っています。私の経験を隠すことはせずに,あえて私の人柄や過去を知ってもらうことで,曲の深みや歌詞の捉え方が変わることもあると思いますし,経験を伝えることで,皆さんの心に寄り添えるのではないかなと思いました。

同じ病気や状況でなくとも,はたまた病気でなくても,人にはさまざまな苦しみがあると思います。そういった部分に,歌詞が重なって,共感とチカラを届けることができたらなと思います。

—— 確かに,「ダイヤノカガヤキ」のサビに登場する「磨いていた命の輝き 信じたい」や「恨んでいないよ人生の淵 立たされた窮地だって」という歌詞は,七海さんのことを知る前後で捉え方や感じ方が全然違うと思いますし,七海さんが歌うからこそのチカラのようなものを感じました。

闘病を乗り越えたからこその想い

—— 音楽活動だけでなく,遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)に関する発信や,ピンクリボン運動など,がんの啓発活動などにも積極的に取り組まれていますが,どのような想いで活動されているのでしょうか。

乳がんがわかったときの気持ちを思い出すと,20代で同じ状況の人が周りにおらず,とても不安でした。「何がどうなるのかわからない,という不安」「周りの人に話しても,わかってもらえないのではないか,という不安」など,いろいろな不安を抱えていました。そんなときに,同じ境遇をもつ方のブログをみつけたんです。そのブログには,リアルな話題や気持ちが書かれており,記事に寄り添ってもらい,たくさんのチカラをいただきました。

なので,闘病を乗り越えた当事者として,私のこれまでの経験が少しでも誰かの気持ちを前向きにできるきっかけになれたらいいなという想いで運動に参加しています。

また,若い人にとって子宮頸がんや乳がんの検診は“他人ごと”のように感じている人も少なくないではないかと思います。「“他人ごと”ではないんだよ」ということを,若い年代で実際に経験した私が,リアルタイムに情報発信することで,検査をより身近なものに感じていただきたいなと思います。

薬局・薬剤師にできること

—— 薬剤師さんに対するイメージはありますか?

私は手術前に面会するイメージが強いです! 手術が近づいてくると薬剤師さんとお話するのですが,毎回「血がサラサラになるお薬を飲んでいませんか?」と確認されるのが印象的でした(笑)

—— おそらく術前中止薬の確認ですね(笑)

—— お話を聞いて「エンタメのチカラ」は,患者さんにとって大切なチカラになるんだなと思いました。例えば,薬局においても,マスコットのついたボールペンを使ってみたり,患者さんの好きなもの・好きなことの話をしてみたりなど,些細なことかもしれませんが,それが患者さんに寄り添うことになるのかもしれませんね。

私は入院中に看護師さんのメイクが可愛くて,コスメの話でとても盛り上がりました。好きなことの話や楽しい話は,気が紛れる面もありますし,ポジティブな気持ちになれるので,きっとみえないチカラがあるんだと思います。音楽だけでなく,エンタメにもいろいろなかたちがあって,コスメの雑談もそうですし,キャラクターにもみえないチカラを感じますよね。

薬剤師へのメッセージ

—— 最後に読者(薬剤師)へメッセージをお願いします。

薬剤師さんには,数えきれないほどお世話になっております。これからも,世話になることがあるかと思いますが,引き続きよろしくお願いします!

また,今回のインタビューで「七海うらら」を知っていただいた薬剤師さんもいらっしゃるかもしれません。動画サイトや音楽配信サイトで,私の楽曲を聴いていただけると幸いです。その他,生配信では,コメント欄でリアルタイムにやりとりもさせていただいておりますので,ぜひチェックしてみてください。

お知らせ

・1st Full Album「Kiss and Cry」販売中


 販売サイト
 各種配信サイト


ニッポン放送レギュラーラジオ
ミリアド・ジェネティクス presents

七海うららのパラレルーム


 番組サイト

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掲載号
調剤と情報2025年2月号

明日から始めるAMR対策
抗菌薬の適正使用の手引き


企画:木村 利美(順天堂大学医学部附属順天堂医院 薬剤部)


薬剤耐性菌の増加により、2050年には全世界で1,000万人が死亡すると予想されており、抗菌薬の適切な使用は医療における喫緊の課題といえます。2023年に発表された「AMR対策アクションプラン 2023-2027」では薬剤耐性菌の出現を防ぐためにさまざまな取り組みが策定され、薬局薬剤師には抗菌薬を適切に使用するためにその処方の妥当性を判断し、積極的に疑義照会することが期待されています。
本特集では、抗菌薬の使用頻度の高い疾患別に、正しい抗菌薬の使用法について、仮想不適切症例をベースに解説します。