服薬状況を話すことが自分への“約束”になる
—— 最初から引っ張る形ではなかったのですね。改良後の「お薬束Ⓡ」を使用した患者さんからの反応はいかがでしたか?
充填の手間が少なく,引っ張って切るだけなのが何より好評でした。また,置きたい場所に置けるので,台所や戸棚のほか,仕事の前に飲むのでパソコンの横に置いているといったように,生活動線上に置いている患者さんが多いようです。置き場所が固定化されると服用が自然と習慣化し,飲み忘れ防止にもつながっています。その他にも,自分で薬を準備できるようになったことで介護者の負担軽減につながったり,残薬確認がしやすくなったりしているそうです。
また,お薬束®の活用を通じて,患者さんのアドヒアランスが向上していくプロセスをうかがい知ることができた気がします。具体的には,①いろいろなツールを比較したうえで,患者さん自身がメリットを感じてお薬束®を選択する,②家に持って帰ったあと,自分で置き場所を決める,③服用という行動を積み重ねるなかで,「あれ,最近飲み忘れていない」ということに気づく,④それが自己効力感につながり,次回来局時に「〇〇に置いて,引っ張って切って飲んでいる。飲み忘れなくなった」と話すようになる,そして,⑤自分が飲めている成功体験を他人に話すことが“宣言”となり,自分への“約束”になる。それが,アドヒアランス向上をさらに強めている気がします。
この「自分に約束する」という部分,これがお薬束®の名前の由来にもなりました。