「メディスタ!」完成までのウラ話
――医療を題材としたカードゲームの教材は似たものが少なく,開発は困難だったのではないでしょうか。
この企画を行うにあたり,いろいろな壁がありました。まず,学内に企画を説明したところ,反対意見がかなり多かったです。「チーム医療のゲーム化なんてイメージできない」「チーム医療の誤った認識をされたくない」など,前向きに進めていける形ではありませんでした。そこで,ゲーム素案をあらかじめ作成し,進め方や内容を具体的に説明することで学内承認を得られるように進めていきました(ただ,ここで「ゲーム」よりも「楽しい教材」寄りになってしまうのですが……)。
学内承認を得た後,本格的なゲーム制作に移ります。最初はいろいろな学科の教員に参加していただいたのですが,どの先生もその道のプロフェッショナルであるので,開発会議では専門的な意見が飛び交い,その結果,高校生では絶対にわからないようなマニアックな内容だらけの面白くないゲームができあがってしまいました。テストプレイを行ったメンバー同士が顔を合わせ,「これはゲームじゃない……」と呟いたことを,いまでも覚えています。
以降はゲーム基盤を完全に一人で作ることにしました。その際,①どうしたらチーム医療を盤上で体験させることができるのか,②医療系の知識がない高校生が,どうしたら楽しめるのか――の2点に注力して考えました。学術的な監修についても,増えれば増えるほど意見をまとめることが難しくなるため,医師として活躍されていた田中邦彦先生(岐阜医療科学大学薬学部教授)に監修をお願いし,高校生でも理解できる表現となるようアドバイスをいただきました。そうして完成したのが,カードゲームでチーム医療を学べる「メディスタ!」というコンテンツです。
カードゲームで学ぶチーム医療「メディスタ!」
「メディスタ!」は,病院で働く医療従事者になりきり,来院した患者をチーム医療でサポートし,さまざまな状況下で適切な検査や治療を選択し,患者を快方へと導いていくゲームです。
――完成した「メディスタ!」はどのように活用されていますか?
ゲームは一般販売しておらず,基本的には出前講義形式で高校の授業時間中や放課後の時間におうかがいし,ゲームを体験してもらっています。
この出前講義は2022年からスタートし,2024年で3年目になります。2024年10月時点で,このゲームを体験いただいた高校は,岐阜県7校,愛知県3校の計10校で,参加した高校生の数は300人以上となっています。参加した高校生からは「チーム医療のイメージや,さまざまな医療職の大切さを感じることができた」「楽しみながらチーム医療を学べた」「ゲームを通してチーム医療を理解でき,医療職への志望度が上がった」などの声をたくさんいただくことができました。「チーム医療をイメージさせる」という最初の目的は達成できたのではないかと思っています。
「メディスタ!」をプレイする高校生。プレイヤーは医師,薬剤師,看護師などの役割を演じ,症例ごとに最適な治療方針を話し合って決めていく