問45
胆汁中への排泄が主な消失経路である薬物はどれか。1つ選べ。
解答:2
薬物の消失経路
薬物の体内からの消失経路は,大きく腎排泄と肝消失(代謝・胆汁排泄)に分けられます。どちらが主な経路となるかは,薬物の物理化学的性質によって決まります。
<胆汁排泄されやすい薬物の特徴>
・分子量が300以上(比較的大きな分子)
・極性基と親油性基の両方を持つ(両親媒性)
・グルクロン酸抱合体
・肝臓のトランスポーター(MRP2,P-gp,BCRPなど)の基質となる薬物
一方,分子量が小さく水溶性の高い薬物は,糸球体ろ過や尿細管分泌によって腎排泄されやすい傾向があります。
各選択肢の解説
【選択肢1】誤り
カナマイシン(アミノグリコシド系抗菌薬)
カナマイシンは水溶性が高く,ほとんど代謝を受けずに未変化体のまま腎排泄されます。アミノグリコシド系抗菌薬は全般的に腎排泄型であり,腎機能低下時には血中濃度が上昇して腎毒性・聴器毒性のリスクが高まるため,用量調節が必要です。
【選択肢2】正しい ✓
プラバスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
<プラバスタチンの薬物動態>
プラバスタチンは,CYP450による代謝をほとんど受けず,未変化体のまま胆汁中に排泄されることが特徴です。
■ 肝取り込み:有機アニオン輸送ポリペプチドOATP1B1を介して肝細胞内に取り込まれます。OATP1B1の遺伝子多型(*15など)を持つ患者では,肝取り込みが低下し,血中濃度が上昇することが知られています。
■ 胆汁排泄:胆管側膜に存在するMRP2(Multidrug Resistance-associated Protein 2)により,未変化体として胆汁中に分泌されます。動物試験では,胆汁排泄を経由した糞中排泄が80%以上を占め,尿中排泄は2〜13%と少ないことが報告されています。
プラバスタチンはCYP代謝を受けないため,CYPを介した薬物相互作用が少ないスタチンとして知られています。ただし,シクロスポリンなどのOATP1B1阻害薬との併用では,肝取り込みが阻害され血中濃度が上昇するため注意が必要です。
【選択肢3】誤り
リチウム(気分安定薬)
リチウムは一価の陽イオン(Li⁺)として存在し,代謝を受けずにほぼ100%が腎排泄されます。そのため,腎機能が低下している患者では体内に蓄積しやすく,リチウム中毒(振戦,意識障害,腎性尿崩症など)のリスクが高まります。TDM(治療薬物モニタリング)による血中濃度管理が重要な薬物です。
【選択肢4】誤り
メトトレキサート(葉酸代謝拮抗薬)
メトトレキサートは主に腎排泄される薬物です。糸球体ろ過に加え,尿細管分泌(OAT1/OAT3を介する)によって排泄されます。腎機能が低下すると排泄が遅延し,骨髄抑制などの重篤な副作用が出現しやすくなるため,腎機能に応じた用量調節が必要です。NSAIDsとの併用では,尿細管分泌の競合により血中濃度が上昇することがあります。
【選択肢5】誤り
エナラプリル(ACE阻害薬)
エナラプリルはプロドラッグであり,肝臓で加水分解されて活性代謝物(エナラプリラート)となります。エナラプリラートは主に腎排泄され,尿中排泄率は投与後48時間で52〜64%です。腎機能障害がある場合(CCr<20 mL/min)には,活性代謝物の蓄積による過度の血圧低下が起こりうるため,減量が必要です。
胆汁排泄される代表的な薬物
胆汁排泄が主な消失経路となる薬物は,国家試験でもよく出題されます。以下に代表例をまとめます。
■ 胆汁排泄型薬物の代表例
・プラバスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)→ MRP2
・ピタバスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)→ MRP2,BCRP
・リファンピシン(抗結核薬)→ P-gp
・ドキソルビシン(抗がん薬)→ P-gp,MRP2
・ビンクリスチン(抗がん薬)→ P-gp
・メトトレキサート(高用量投与時)→ MRP2,BCRP
・ジゴキシン(強心配糖体)→ P-gp(腎排泄も重要)
<腸肝循環に注意>
胆汁中に排泄された薬物やそのグルクロン酸抱合体は,腸内細菌によって脱抱合された後,再吸収されることがあります(腸肝循環)。腸肝循環が起こる薬物では,血中濃度の二次的上昇や消失半減期の延長がみられることがあります。
服薬指導・実務への応用
薬物の主な排泄経路を理解しておくことは,腎機能低下患者への投与設計に直結します。
■ 腎機能低下時
腎排泄型薬物(カナマイシン,リチウム,メトトレキサート,エナラプリルなど)は蓄積しやすいため,用量調節や投与間隔延長を検討します。
参考文献
・第一三共株式会社:メバロチン錠,インタビューフォーム(2024年6月改訂,第9版)
・日本腎臓病薬物療法学会 腎機能別薬剤投与方法一覧作成委員会・編:腎機能別薬剤投与量 POCKET BOOK 第5版. じほう, 2024
・前田和哉:胆汁排泄とトランスポーター. 日本薬理学雑誌, 135: 76-79, 2010