
一般名: | セフジニル |
所 属: | Pharma警察 セフェム課 第3部隊 |
職 業: | 警察官 |
説 明: | 細菌の防御壁(細胞壁)を破壊する部隊の一つ。セフェム課は第1〜4部隊まであり,その第3部隊に所属する。セフジニルは金属カチオン(特に鉄)へ強い推し活愛をもつ。 |

一般名: | エチドロン酸 |
所 属: | カルシウム採掘工事現場 |
職 業: | 現場指揮 |
説 明: | カルシウムの採掘を行う破骨細胞がカルシウムを採掘しすぎないようにバランスをとるのが仕事。金属カチオンの推し活に熱心(箱推し)。 |
構造式
キレートを形成する薬物の構造

はじめに
金属と難溶性キレートを形成し,吸収が低下する代表的な薬物として,ニューキノロン系抗菌薬,テトラサイクリン系抗菌薬,ビスホスホネート製剤,セフジニルが挙げられます。セフェム系抗菌薬に関しては他の抗菌薬ではなくセフジニルだけが難溶性キレートを形成します。他のセフェム系抗菌薬とセフジニルの違いは何でしょうか。今回は金属と難溶性キレートを形成する薬物の構造についてみてみましょう。
キレートを形成する薬物の構造
キレート(chelate)とはラテン語で“蟹のハサミ”を意味するchelaに由来します。複数の配位原子(OやNのような電子をもつ原子)がプラスに荷電している多価金属カチオンを挟み込むようなかたちで配位して環構造を作った安定な金属錯体の総称です。そのため,キレート形成する医薬品の構造は,金属原子を挟み込むために複数の配位原子を2~3原子離してもつという特徴があります。簡単にいうと,カルボニル基(C=O)とヒドロキシ基(‒OH)が近くで並んでいる構造と考えてもらえればいいです(図1)。

これが金属をハサミのように挟んで複合体を形成します。場合によっては,ビス(ミノサイクリナト)マグネシウムのように複数のハサミで挟む場合もあります(図2)。
水溶性に寄与しているカルボニル基やヒドロキシ基が金属に配位することもあり,キレートを形成すると溶解性が低下し,難溶性となり吸収が著しく低下します。

セフジニルのキレート
セフェム系抗菌薬のセフジニルもキレート形成する薬物ですが,他のセフェム系抗菌薬はキレート形成について添付文書などに記載がありません。セフジニルと他のセフェム系抗菌薬の違いは何なのか,まずセフジニルが形成する主なキレートのかたちをみてみましょう(図3)。

セフジニルが形成するキレートにはオキシム(C=N‒OH)のNやOが関与しています(図4)。

他のセフェム系抗菌薬の構造をみてみると,セフジニルがもつオキシムの構造はみられません。セフジニルと同じ第三世代セフェムのセフジトレンやセフポドキシムは,オキシムのヒドロキシ基の部分をメトキシ基(O‒CH3)に変換することでキレート形成を回避していることが読み取れます。セフェム系抗菌薬のなかでセフジニルだけがキレート形成について強調されるのはこれが原因です(図5)。

また,便や尿の色調変化についても添付文書に記載されていますが,これもキレート形成が原因です。具体的には,消化管内で鉄イオンとキレートを形成することにより便が赤色調を呈し,血中でキレート形成することにより尿の色が赤色調を呈します。。
キレート形成による吸収率の変動
キレート形成による吸収率が低下する変動率は,医薬品の種類やキレート形成する金属の種類によって異なります。大きく変動する組み合わせは特に注意する必要がありますが,キレート形成する薬物は,金属と接触しないように,投与間隔をあけることでキレート形成を回避できます。鉄剤や制酸薬などと併用する場合は,投与間隔をあけて服用すればキレート形成を回避できますが,制酸薬であれば金属を含まない他の薬剤への変更も当然選択肢の一つになります。また,牛乳やサプリメントを常用している患者には摂取のタイミングについて指導が必要になりますので注意しておきましょう(表)。
