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 くすりのプロファイル

一般名: ケトプロフェン
所 属: 芸能プロダクション エヌセイーズ
職 業: アイドル
説 明: 男性9人組アイドルグループ「プロピオン」のメンバー。グループ内の人気は3位。背が高く,カラフルな衣装を好む。裏では光線過敏症の原因となるチーム「発色団」に所属しお金(光エネルギー)を貰うことで悪さをする裏の顔がある。
一般名: スパルフロキサシン
所 属: Pharma警察 ニューキノロン課
職 業: 警察官
説 明: 突入し,細菌の重要文書(DNA)の複製を辞めさせ体内の細菌達を撲滅するニューキノロン課に所属する。任務を遂行する一方で,「発色団」に所属しており,光線過敏症の原因となる。
一般名: ミノサイクリン
所 属: Pharma警察 テトラサイクリン課
職 業: 警察官
説 明: テトラサイクリン課に所属し,張り込みを得意とする。張り込みにより細胞壁の合成を阻害し細菌の増殖を抑えるのが任務である。しかし,「発色団」に所属しており,光線過敏症の原因となる。

 構造式

 はじめに

ケトプロフェン,テトラサイクリン系抗菌薬,ニューキノロン系抗菌薬は光線過敏症の原因となる薬物として,薬剤師国家試験では定番です。他にもループ利尿薬,チアジド系利尿薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB),スルホニルウレア(SU)薬,一部の抗悪性腫瘍薬など光線過敏症は多くの薬物で報告されています。こういった光線過敏症を起こす薬物には,構造的な特徴が存在しています。その特徴を解説する前に,まずは光線過敏症の発症機序について確認しておきましょう

 光線過敏症の発症機序

光線過敏症は,軟膏剤や貼付剤などの外用剤を用いた部分に日光が当たって,水ぶくれや掻痒感などの皮膚症状が出現する「光接触皮膚炎」と,内服薬を服用後に日光に当たった皮膚に発疹が起こる「光線過敏型薬疹」があります。これらの発症機序には①光毒性,②光アレルギー性 ─の2種類の機序が考えられています

光毒性

光化学反応によって発生した活性酸素が直接組織や細胞に障害をもたらすことにより光線過敏症を発症する機序です。数分から数時間と短い時間で発症し,初回曝露から発症します。ただし,症状は光が当たった場所のみに生じるという特徴があります。

光アレルギー性

光化学反応により薬物が抗原またはハプテンとなって感作し,Ⅳ型アレルギーを引き起こす機序です。初回曝露はごく少量の炎症で済む一方,2回目以降は症状が強くなることが多い特徴があります。またアレルギーであるため,症状は光が当たった場所のみに限らず,光が当たっていない場所でも生じる可能性があります。

いずれの発症機序においても「光化学反応」により反応性が高まることが原因であり,直接組織や細胞に障害を起こせば「光毒性」,タンパク質などと反応したことで感作すると「光アレルギー性」となります。では「光化学反応」を起こしやすい構造,つまり光線過敏症発症につながりやすい構造とはどのような構造なのでしょうか。

 光線過敏症の原因となる構造

光化学反応とは,物質が光エネルギーを吸収することで起こる化学反応を指します。ある程度限定的な表現を使うと「薬物が紫外線を吸収することで電子を飛ばす」と捉えてもらえれば良いと思います。
具体的には,非共有電子対をもつカルボニル基(C=O)の酸素原子などから,紫外線のエネルギーによって電子が飛ばされ光化学反応が起こるのですが,通常は電子が飛ばされるとカルボニル基が不安定となるため起こりにくい反応です。しかし,共役系が存在すると共鳴により電子を飛ばされたカルボニル基が安定化されるため光化学反応が起こりやすくなります。つまり「共役系に非共有電子対をもつ原子」が存在すると光線過敏症を引き起こしやすいということになります(図1)

このような視点で改めて3つの構造式をみてみるとどうでしょう。光線過敏症を引き起こしやすい構造だということがわかるのではないでしょうか(図2)

また,光線過敏症の原因となる薬物の構造式を共役系に注目して確認すると,同じような構造をもっていることがわかります(図3)

 遮光保存が必要な薬物の構造

少し話が変わりますが光といえば,遮光保存が必要な薬物があります。その構造式を並べてみると,多くの薬物がやはり共役系をもっているという共通点があることをみいだせます(図4)

著:黒木 央

大阪薬科大学卒。大手国家試験予備校で10年間講師として勤務後,調剤薬局において内定者教育や薬剤師教育に携わる。現在は,国家試験と現場の橋渡しを担うべく「PharmAssist Lab(ファーマシスト ラボ)」を設立し,薬学生教育,薬剤師学術研修,MR研修などを中心に活動中。

イラスト:角野 ふち

看護師として勤務しながらイラストレーターとしても活動し,メディカルイラストを中心に雑誌や書籍などの制作を行う。また,解剖生理学×イラストをコンセプトに臓物をポップに描く,見て学ぶコンテンツ『からだずかん』を手がけている。好きなくすりは,アセトアミノフェン。

掲載号
調剤と情報2023年9月号

SDMは対人業務を目指す 薬剤師の福音 になるか
Shared Decision Making


企画・編集:森 和明(株式会社ユヤマ 学術部)/岡田 浩(和歌山県立医科大学薬学部)


SDM(Shared Decision Making:共有意思決定)は治療選択肢が増える高齢社会の医療において、ますます有用になることは間違いありません。しかし、わが国におけるSDMに対する認識や実践は、まだまだこれからであるのと同時に、薬局薬剤師にとってSDMに取り組むことがチャンスであることに気づいている人は少ないのが現状です。したがって、現場で求められるスキルとしてSDMの概念をしっかりと理解しておくことが最も重要といえます。
本特集では、薬局薬剤師とSDMをテーマに基礎知識から疾患やコミュニケーションスキルまで、SDMの概念を詳細に解説します。

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